カスタムダンプ

振動止めは「鈍感度」に注目! 「なんでも同じ」じゃないんだぞ。 なんとバボラ【カスタムダンプ】は 鈍感度を調節できる機能型振動止めだった。

あまり意識せずに選ばれがちな振動止め。
振動はインパクトを知るための情報源でもあります

テニスラケットに必要なものは何でしょうか?

◎ ストリング …… 絶対に必要
◎ グリップテープ …… 大多数が使用
◎ 振動止め …… かなりの人が使用

ストリングは、ルール的にも「ラケットの一部」として扱われるということで、さておいて、「グリップテープ+振動止め」は、いまや必須アイテムとしてショップでは薦められますね。

テニスラケットの性能が非常に高くなった今日でも、ラケットに振動止めを装着しているトッププレーヤーは少なくなく、その姿を目にしたみなさんが「私も使ってみよう!」ということで広まり、振動止めはすっかり定着した感があります。

いろいろなアンケート調査の結果を見てみると、プレーヤーがもっとも気にすることは「打球の飛び」と「打球フィーリング」です。どちらもラケットフレームとストリングが大きく関与しています。

「ボールを打つ」とは、ボールとラケットとの衝突現象で、これを「インパクト」と呼びます。インパクトが強烈であればあるほど、衝撃は大きくなり、それによって起きる振動も激しくなるもの。
振動……というと、どこかすべて悪者のようなイメージがありますが、プレーヤーに不快感を与えるものもあれば、インパクトの状態を手に伝える情報源ともなります。ですから、振動のすべてが悪者ではなく、それなりの振動は、むしろ必要でもあるのです。

たかが振動止めと侮ってはいけない!多種多様な振動止めには、それぞれ効果の違いがあるのです

バボララケットでは、そうした振動のうち、不快と感じるものだけを取り除くために【コアテックス】を搭載しています。とくに最新【ピュアドライブ】では、フレーム内部に素材的に投入され、多くのプレーヤーが「従来よりも、いっそうマイルドになった」とコメントしています。

しかし【コアテックス】が取り除ける振動は、あくまでフレームに発生する振動であって、ストリングに発生する振動は別物です。
そのストリングに発生する振動を抑えるのが、いわゆる振動止めであり、いろんなタイプが市販されています。
誤解しないでいただきたいのは、どれも、ストリングの振動を「吸収」するものではなく、「振動が発生しにくくする」もので、そのぶんだけ敏感さが失われ、打球感を鈍感にしてくれます。

問題は、「鈍感にしてくれる程度」=「鈍感度」です。
縦ストリングの中央10本ほどにウネウネと装着するワームタイプは、鈍感度がもっとも高く、腕への負担が大きい厚ラケなどに向いています。横長タイプは、縦ストリング6本ほどを押さえるスタイルで、腕に優しいと感じたいシニアや女性プレーヤーによる需要が大きいようです。

もっとも使用率が高いのが「センター2本」タイプです。縦ストリング中央の2本の間に挟み込むスタイルで、鈍感になりすぎず、適度に振動を抑えてくれるところが、多くのプレーヤーから人気を得ています。

今日では、ラケットメーカーやアクセサリー専門メーカーなど、あらゆるメーカーから、さまざまな形状のものが発売されていて、もっとも多いのが「固形タイプ」。四角いものや丸い形状で、エッジに刻まれたスリットを2本の縦ストリングに挟み込むのです。

素材はおもに「シリコンラバー」で、その形状や重さなどによって、微妙に鈍感度が違います。一般的には、鈍感なものほど「効く」と表現されますが、傾向としては、シリコンラバーの量が多くて、重いものほど効くようです。

バボラからも【ビブラキル】、【ルーニダンプ】、【フラッグダンプ】、【カスタムダンプ】という4タイプの振動止めが発売されています。【ビブラキル】は縦糸6本をカバーする横長タイプですが、他の3アイテムはセンター2本タイプ。
【ルーニダンプ】は楽しいキャラクターをデザイン化したアイテムで、自分の個性をアピールすることもできるでしょう。【フラッグダンプ】はバボラのロゴマークをかたどった小型タイプで、バボラファンには魅力的な振動止めですね。

ナダルが愛用するバボラ【カスタムダンプ】は振動止めのくせに、たいした機能を持ったスグレもの

注目してほしいのは【カスタムダンプ】! 今年、見事に頂点への復活を果たしたラファエル・ナダルが使っているアレです。
これには大きな特徴があり、2つのリングの組み合わせによって、振動抑制効果を調節することができるという機能があり、そのときのプレーヤーの調子や、ストリングや気温などの環境差によって、「効き具合」をコントロールすることが可能なのです。

基本スタイルは、外側の大きなベースリングだけでのプレーです。リングタイプの振動止めは、【ルーニダンプ】や【フラッグダンプ】のような固形タイプに較べて、振動を抑える効果は「控えめ」です。手応えをしっかりと把握したいプレーヤーに適していて、インパクトの状態がどうであったかという情報を明確に掴みたいときにはぴったりのスタイルです。

でも、ときには「なんだか振動が大きく感じるな」というときがありますよね。ストリングの種類や、張りの状態によって、そう感じることがあったりしますが、そうしたときには、ベースリングの中央に、もう一つの小さな「Oリング」を挿し込んで、ダブルリング状態にします。もちろん、ダブルリングスタイルが気に入れば、それを基本スタイルにして使ってください。

この画期的な2ピース構造は、他の振動止めにはありません。バボラ独自のチューニングシステムで、振動の感じ方によってカスタム化できるところから【カスタムダンプ】と名付けられたのです。

商品は2個セットで販売されていますが、カスタム用の「Oリング」は片方にだけセットされているので、いつもは使わなくても、なくさないように大切に保管しておくといいですよ。めったに使うことがなくても、何かのときに使いたくなるかもしれません。せっかくのカスタムシステムですから、いつでも活用できるように、ラケットバッグのポケットに常備しておきましょう。

振動止めをメンタルコントロールに使う杉田祐一選手のチョイスは、なんと「てんとう虫」

ラケットというのは、工業製品ですから、みんな同じ形で販売されています。でも、ストリングの色やステンシルマークによって、自分らしさを表現することができるものですね。
振動止めはとても小さいパーツですが、自分の個性をアピールするアイテムでもあります。機能とフィーリングが自分にマッチすることが最優先ですが、同じような感覚であれば、個性あるデザインを選んでもいいでしょう。

そんな個性を見せているのが、今年、大きな飛躍の年となった杉田祐一選手で、彼が使うのは【ルーニダンプ】の『てんとう虫』タイプ。プロ選手としてはきわめて珍しい「可愛いアイテム」を愛用しています。
杉田選手に直接訊く機会があったので、「どうしてアレを?」と質問を向けると、意外にもちゃんとした答が返ってきました。

彼は決してオチャラケで選んでいるのではありませんでした。杉田選手は、振動止めにはかなりこだわるタイプで、これまでありとあらゆるタイプを試してきたそうです。
そのうえで選んだのが【ルーニダンプ】。
てんとう虫のチョイスには、彼なりの「効果」があるからでした。
「世界のトップレベルの試合中というのは、ものすごい緊張感とプレッシャーに耐えなければなりません。あまりに緊張が強すぎると、自分を失いがちになることがあります。そんなときにフッとてんとう虫の振動止めを見ると、心がフワッとして、それまでの緊張感が解けるんですよ。今の僕にはなくてはならないアイテムです」。

振動止めには、いろんな機能があるものですね。
硬いラケットの衝撃や振動を抑えるために【ビブラキル】のような効果の高いアイテムを装着したり、杉田選手のようにメンタルコントロールに【ルーニダンプ】のデザインの楽しさを活用したり、微妙なフィーリングを保つために【カスタムダンプ】で調整したりと、あんな小さなアイテムひとつでも、いろんな活用法や愉しみ方があるものです。
ぜひみなさんも、「なんでもいいよ」なんて思わず、いろいろ試して、自分に最高のメリットがあるものを選んでください。

babolat

Text by 松尾高司(KAI project)

まつお・たかし◎1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー