あなたのテニスは今、快適ですか? 快適テニスはストリングの反発力が担っている。ラケット価格の1割くらいで選ぼう!

「ストリングなんてどれでも同じ」と思ってませんか!?
おまけにタダで付いてくる品質に疑問はありませんか?

テニスラケットを買うと、店員さんに訊ねられるのが「ストリングはどれにしましょうか?」ですね。
いや、「ガットはどれに?」と言うかもしれませんが、正しくは「ストリング」です*。割引き価格を押し出すショップでは「オリジナルのサービスガットなら、タダで張ってあげるよ」なんて言われることもあるでしょう。
そして「ならば、それでいいです」と、つい言いたくなるものですね。

そもそも「サービスガット」とか「オリジナルのガット」って何でしょう?
全部がそうではないでしょうが、そのショップが海外の安いストリングを作る工場へ直接に発注した、概して品質の低いものが多いですね。
お客さんの中には「ストリング代がタダになるから、その店で買う」という人もいるでしょうから、サービスというよりも、販売促進の方策ですね。
ローコストが悪いわけではありませんが、信頼できる性能を持つ商品には、それなりの製造コストがかかるものです。
タダでもらえるものと、ちゃんと買わなければならないものが、同じテニス環境を与えてくれるはずがありません。
あなたが快適なテニスを楽しみたいのであれば、まず信頼できるメーカーが製造販売しているストリングを選ぶことが第一歩なのです。

では、いくらくらい出費すれば、ダメなストリングではないのでしょう?
大雑把な目安ですが、だいたい「2000円くらい」を出せば、ダメということはないでしょうね。
でも、2000円以上ならば、どれでもいいというわけではないんです。
あなたには「あなたに適したストリング」があるのです。

めったに切れない人にはポリエステル系は不要。
快適にテニスしたいなら、マルチフィラメントを選ぼう!

パワジー
オリジン

「ストリングはどれでも同じではない」と知れば、「どれを選んだらいいの?」と考えることになりますね。
テニスを始めるために、初めてラケットを買ったときは、どれにしたらいいかわからないでしょうから、ノーマルタイプのものを張ってもらったかもしれませんが、いよいよ張り替えようというときには、自分のプレースタイルにマッチするものを選ぶようにしましょう。
それが、あなたのテニスを快適にしてくれるのです。

まず最初に考えることは「ストリングがすぐに切れてしまう」ということがあったかどうかです。
もしもまるで切れることがないのなら、ポリエステル系(ポリ系と省略して呼ばれます)を選ぶのはやめましょう。
なぜなら「その必要がないから」だけでなく、ストリングを切らないプレーヤーのパワーレベルでは、ポリ系の性能を発揮できないうえに、打球感が硬いだけで、ボールを飛ばすのを手伝ってくれない「快適ではない選択」となるからです。
ですから、ストリングをめったに切らないプレーヤーは、「モノフィラメント」や「マルチフィラメント」と呼ばれるカテゴリーから選びましょう。

さて、「モノフィラメント」というストリングは、「ボールを軽快に飛ばしてくれるパワーがある」のが特徴ですから、スイングがゆっくりなプレーヤーや、非力なプレーヤーが、楽にボールを飛ばしたい場合に向いています。
また逆に、速いスイングができて、打球を鋭く高速で打ち込みたいプレーヤーにも適性が高いですね。
モノフィラメント系のキーワードは「シャープな打球感と俊敏なパワー」です。

エクセル
アディクション

いっぽうマルチフィラメント系は、インパクトでボールを包み込むような「ホールド感」が個性なので、ゆっくりした小さめのスイングで、タッチで打球をコントロールするプレーヤーに向いています。
あるいは、高速スイングのプレーヤーでも、マイルドな打球感が好きな人には好まれるでしょう。

近年のラケットフレームは、どんどん強靭でパワフルに進化してきています。
つまりボールがよく飛ぶようになってきているわけですから、そのパワー増が、打球の飛び過ぎにつながってしまうようならば、「打球感がマイルドで、飛びパワーが控えめ」というストリング……マルチフィラメントを選ぶのがいいですね。

ストリングがすぐに切れてたまらない……
そういう人が使うのがポリエステル系ストリング

初級レベルのプレーヤーでは、めったに見られませんが、あまりにスイングがパワフルなために、ストリングへの負担が大きすぎて、モノフィラメント系やマルチフィラメント系では、すぐに切れてしまうという方は、衝撃に強い素材でできている「ポリエステル系」のストリングを選ぶのがいいでしょう。
このポリエステル系ストリングは「切れにくい」のが特徴ですが、それは「すべての人へのメリット」ではなく、あくまで「切れすぎて困る人」にとってのメリットと理解してください。

よく『耐久性が高い』というキャッチフレーズを見かけますが、そんなにストリングを切らないのに、ポリエステル系を選ぶのは間違いです。
もしも、あなたが「ストリングが頻繁に切れて困る」と訴えないのに、ショップの方にポリエステル系を薦められたとしたら、そのショップスタッフは、ストリングのことをよく知らないのだろうと思っていいですね。
すべてのショップスタッフがストリングのことを正しく理解しているわけではありませんから、自分で正しい知識を持つことは大切なことです。

ポリエステル系が本領を発揮するのは、「超高速スイングをできるパワフルなプレーヤー」に使われるときです。
ポリエステル系ストリングは、強烈なインパクトのときだけ、伸縮を発生させ、ストリング面に反発力を生み出すのです。
ですから、このストリングに、ボールを強烈に弾き出すパワーを発揮させられるのは、超高速スイングをできるプレーヤーだけ……と考えて、そうでないプレーヤーは、モノフィラメント系やマルチフィラメント系から選ぶのが無難と言えるでしょう。

寿命を過ぎたストリングは「味のなくなったガム」と同じ
あなたはいつまで噛み続けますか?

テニスショップでの張替えポリエステル系ストリングは、すぐに切れて困っている人向きだと話しましたが、それでは、ストリングを切らない人は、いつまでも使い続けてもいいのでしょうか?
じつは、そうではないんです!

ストリングは、ラケットフレームに網状に張られていますが、その1本1本が伸縮することで、ストリング面の反発力を発生させることができるのです。
ほとんど伸縮しない金属で作られている金網にぶつかっても、強く跳ね返されることはありませんが、トランポリンの上に落下すると、同じくらいの高さまで飛び上がらせてくれますよね……それが「伸縮性」の効果なのです。

天然素材でできているナチュラルガットは、この伸縮性が長い間、保たれるのですが、合成素材でできたシンセティックストリングは、使っているうちに、どんどん伸縮性が低下してきます。
つまり「打球が飛ばなくなっていく」わけです。
毎日、連続的に使っていると、その変化に気が付きにくいのですが、例外なく、確実に反発性は低下します。
もしも「私は敏感だから変化に気付くはず。でもほとんど変わらないよ!」という方がいたら、それは「すでに伸びきったストリングを使い続けている」からわからないのです。
まるで味のしなくなったガムを、いつまでも噛み続けているのといっしょで、ただなくならない(切れない)だけなんです。

世界のツアーを巡るプロ選手は、大切なパワー発生装置であるストリング環境をベストに保って戦うために、かなり頻繁に張り替えます。
多い選手は、たとえ使わなかったラケットでもストリングを切ってしまい、かならず毎試合ごとに新しいストリングに張り替えてコートに入ります。
それくらい、ストリングがフレッシュであるかどうかは、彼らにはおおきな影響があるものなのです。

しかしプロではないあなたは、ストリングに莫大な費用を投入することはできませんし、その必要もないでしょう。
でも週に何度もプレーする方の場合、ストリングの性能寿命を考えれば、1カ月に1回くらいのペースで張り替えるのが理想です。
少なくとも、3カ月に1回は張り替えるようにしてください。
「そんなの無理だ!」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょうが、あなたの快適なテニスは、ストリングの反発力の上に成り立っていることを理解して、きちんとケアをしていけば、きっと上達も早いことと思います。

正しくは「ストリング」です*

ラケットに網状に張る糸は、総称して「ストリング」と呼ばれます。ストリングは素材によって「シンセティックストリング」と、「ナチュラルガット」とに大きく二分されます。石油から生まれる合成素材によって作られるのが、安価で一般的に多く使われる「シンセティックストリング」。それに対して、動物の腸(現代ではおもに牛腸)から作られるのが「ナチュラルガット」なのです。
「ガット」というのは英語で「動物の腸」を意味する単語ですから、合成素材由来のシンセティックを「ガット」と呼ぶのは完全に間違いであり、それが使われているのは日本だけです。もし海外で「ガット」と言えば、確実に「ナチュラルガット」を指します。文中に出てきた「モノフィラメント」も「マルチフィラメント」もシンセティックストリングの中の1カテゴリーです。
ショップなどでは、すべて「ガット」と慣習的に呼ばれてしまいますが、みなさんは正しく「ストリング」と呼ぶようにしましょう。

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Text by 松尾高司(KAI project)

まつお・たかし◎1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー