初めての張り替え……。あなたは「指定テンション」をどうしますか? そもそも「テンション」って何?

海外ではラケットにストリングが張られて売られている!?
日本では、フレッシュなストリングを張り上げて完成・手渡し

テニスショップでの張替え

海外の大手スポーツ店ヘ行くと、ジュニア用のエントリーモデルから競技者用モデルまで、ほとんどのラケットは「ストリングが張られた状態」で売られています。
買ってすぐに始められるのはありがたいんですが、その張り方はじつにアバウト……言い換えれば「雑」で、初めて張り上げている現場を視たときには唖然としました。

そもそも、いつ張られたストリングなのかわかりません。ストリングの賞味期限というのは、快適にプレーを楽しめるようにストリング性能が機能してくれる期間のことで、じつは意外に短いものです。「張ってあればいい」「切れなければそれでいい」というものではありません。

日本で売られているテニスラケットは、ほとんどが「ラケットフレームとストリングは別売」というスタイルです。ですから、初めてラケットを買う場合でも、ストリングを別に選んで、張ってもらう必要があります。

ただ、初めてラケットを買うときって、ラケットフレームはショップのスタッフさんに相談に乗ってもらいながら選んでも、ストリングの種類や張り上げテンションなんてチンプンカンプン。多くの方が「お店のスタッフのお任せで」となりますよね。

なにしろ初めてテニスをするわけですから、どのくらいが本人にとっての適正かどうかわかりません。たいがいの場合は、選んだラケットの性能にマッチするような標準的なテンションが選ばれるでしょう。ラケットのカタログには「推奨テンション」という記載項目があり、その範囲内で、ご本人の体格やちょっとした質問をヒントに、スタッフさんが判断してくれるものです。

そもそもストリングの「テンション」って何?
ストリング1本1本が20kg以上の力で引っ張られている!

ストリングマシーン

そこでちょっと「ストリングのテンション」について話しましょう。テニスラケットを買って、ストリングを張るときに「テンションはどうしますか?」と訊
かれますが、それは「ラケットにストリングを張る作業の中で、どのくらいの強さで引っ張るか?」という意味です。

ストリングはフレームに張られるときの強さによって、打球感や打球性能が大きく違ってきます。緩く張れば、打球感は柔らかくなり、ボールもよく飛ぶようになります。逆に硬く張れば、打球感も硬くなり、ストリングがボールを飛ばそうとする力を抑えて、自分のスウィングパワーに応じた飛びをしてくれます。それは、プレーヤー個人の「好み」「プレースタイル」によって選ばれるもので、「上級者は硬く、初級者は緩く」ということではありません。

50年前くらいまでは、ストリングは「手張り」といって、畳職人が縁を縫い付けるときのようにグイグイ引っ張りながら張っていて、硬く張るか緩く張るかについては、力加減による「強め」か「弱め」といった指定しかできませんでした。ところが「ストリンギングマシン」という機械を使って張られるようになったとき、「どのくらいの力で引っ張って張るか?」を「○○ポンドで」というように指定できるようになったのです。

たとえば「50ポンドで」と指定すると、ストリンガー(ストリングを張る方)はマシンに「50ポンド」をセットします。1ポンドは約453.6gですから、50ポンドはだいたい22.7kgということになります。つまりラケットフレームに張られる1本1本のストリングに、22.7kgという強い力がかかっているわけで、たとえば縦16×横18のストリングパターンならば、そのフレームには770kg以上の力がかかっていることになります。

初級者だから、そんなに気を遣わなくても……は間違い
ちゃんと飛ぶストリングじゃないとテニスが楽しくなくなる

テニススクールや学校の部活でプレーするようになり、テニスが楽しくなってくると「ストリングを張り替えてみようかな?」と思うでしょう。
きっとテニスショップの店員さんが「ストリングは少なくとも3カ月に1度くらいは張り替えましょうね」って言っていましたよね。
初級者だから、そんなに気を遣わなくてもいいだろう……というのは間違いで、初級者ほど、ストリングがボールを飛ばしてくれる「反発性能」が大切なのです。教えられたとおりに打っているのに、ボールがちゃんと飛んでくれないというのでは、楽しいはずのテニスが楽しくなくなってしまうかもしれません。
小中学校でテニスをされているお子さんをお持ちであれば、親御さんが張り替えを薦めてあげてください。それに、テニスショップヘ行ったとき「あんなにたくさんの種類のストリングがあるってことは、それぞれに違った性能を持っているんじゃないかな?」と興味を持つ方も少なくないんじゃありませんか。

初めてラケットを買ったときとは違う「張り替え」依頼を!
まず最初にやってみることは、最適な「テンション」探し

さて、ストリングを張り替えてもらうためにショップへ行って、ストリングの種類と性能の違いのことを伺い、「じゃ、これにしてみよう!」と決めたのはいいんですが、「テンションはどうしますか?」と訊かれて、どう答えればいいかわからない……」というのが「初めての張り替え」での関門です。

張り替えるときのテンション選びの基準は「これまで使っていたテンション」。自分が「ちゃんと打てているな」と思ったときに、ボールが「飛びすぎているか」「飛びが足りないか」を基準にします。

テニスというのは、自分の感覚と、実際の現象とにギャップがある場合が多いので、もしも自分で判断しづらいときは、テニス仲間やコーチに「私のボールの飛びはどうかな?」と訊いてみましょう。

「自分は気持ちよく打てているんだけど、コートに入らずにアウトすることが多い」というときは、張り上げテンションの数値を、ちょっと高くしてみましょう。
逆に「ちゃんと打っているのに、ボールが飛んでいかない」というときは、以前の張り上げテンションよりも、少し下げてみるのがいいでしょう。
このときの「ちょっと」「少し」というのは、だいたい3〜5ポンドくらいと思ってください。

ストリングを張るマシンでは、張り上げテンションを10ポンド〜90ポンドまで指定することができます。ただ、あまりに緩すぎればコントロールするのが難しくなり、極端に硬すぎては、ストリングの伸縮性能を発揮させることができなくなる場合があります。ですから、特殊な場合を除いては、張り上げテンションの指定は、カタログにある「推奨テンション」の範囲内で見つけていくのがいいと思います。

もし、それでも自分の気に入った飛びを得られない場合は、ストリングの種類を変えてみることをお薦めします。

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Text by 松尾高司(KAI project)

まつお・たかし◎1960年生まれ。『テニスジャーナル』で26年間、主にテニス道具の記事を担当。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー